施設園芸における作物水分動態推定のための非侵襲計測技術(4)トマト葉内と主茎内水分の同時計測による水分動態推定の可能性

摘要

本稿では，施設園芸環境下にて新たにトマト主茎内を流れる水分の定量化手法を提案し，筆者らがこれまで開発した葉内水分センサとの同時利用による作物水分動態推定の可能性について報告する．これまで，我々は，成長や光合成といった植物の生体活動に密接に関係する水分動態推定のために，半導体分光センサを用いた葉内水分センサの開発と，センサ計測値を水分量として換算する指標化の提案を行い，農場現場での実践的な利用を可能とするセンシングシステムの実用化開発を進めてきた．葉内水分吸収波長を特定した後，高さ階層別にトマト葉内の水分を計測したところ，開発した葉内水分センサは農業現場において実用に得る可能性を示した．しかしながら，作業仮説に基づいて間接的に作物水分動態を計測できる可能性を示したものであり，今後は作物主茎内を流れる水分の流れを表現できるセンシングシステムを開発することが必要である．よって，本研究では，新たにレーザードップラー法を用いた小型のセンサを用いて主茎内水分動態の定量化の検討を行い，葉内水分センサとの同時計測による新たな環境制御技術の指標作成の可能性を模索する．以下，これらの機器を使用して得た結果，指標開発の現状および課題について報告する．