ゆっくりと回転する球殻中の臨界熱対流の回転逆行伝播について

摘要

回転する球殻中の熱対流の問題は, 恒星や巨大惑星あるいは惑星流体核中の内部流体運動のもっとも単純で本質的な物理的設定を取りだした基本的なモデルとして約半世紀前から考察されてきている. 特に, 天体内部の流体の拡散係数の小ささのために, 球殻の回転角速度が速く, 系がテイラープラウドマンの定理の制約に支配される状況での熱対流の性質が地球物理学的応用として重要視されてきている. そのため回転が速い場合の臨界対流の性質は近年の計算機の発達に伴って広く理解されるようになってきた. Busse の先駆的仕事によって示された局所的な回転軸方向に伸びた2 次元テイラー柱型の臨界対流の発生は, Zhang とBusseやZhangによる数値的な臨界対流の計算によって限定的なプランドル数に対してのみ適切な表現であることが明らかにされた: プランドル数がO(1) より大きい場合には局在したテイラー柱型対流が出現するのに対してプランドル数がO(1) 程度あるいはそれより小さい場合には2 次元テイラー柱が局在せず円筒動径方向にらせh状に伸びた構造となり,さらにプランドル数が小さいと赤道外側境界付近に局在した構造となる. この結果を受けて, 高速回転における臨界熱対流の数学的漸近表現の見直しやらせh状対流構造や赤道壁面モードの物理的解釈が行われて来ている.