世代別積立方式に基づく公的年金制度における個人の負担給付比率の評価

摘要

日本の公的年金背制度は事実上の賦課方式で運営されている．賦課方式とは公的年金制度の財政方式のひとつであり，保険料納付者から集めた保険料をその時点における年金給付者の年金に充てる財政方式である．少子高齢化により，日本の公的年金制度は，世代間公平性や財政的持続可能性の問題など多くの問題を抱えている．そこで筆者らは，少子高齢化に対応した公的年金制度の財政方式として世代別積立方式を提案してきたが，具体的な年金額の算定方式など，制度の詳細について述べられていなかった．世代間公平性や財政的持続可能性の問題とともに，近年の顕著な問題として国民年金保険料の未納問題がある．未納そのものも重要な問題であるが，それとともにもうひとつ重要な問題がある．現行方式は事実上の賦課方式であるため，未納が多発すれば不足する年金財源を補うために一律に保険料の引き上げや年金の引き下げなどが行われ，満期まで保険料を納付した被保険者にまでそのしわ寄せがおよぶ可能性がある．そこで本稿では，少子高齢化に対応した公的年金制度の財政方式である世代別積立方式の下で年金受給者個人が受け取る年金額の算定方式を提案し，当該方式を適用した場合の負担と給付の関係をシミュレートすることによって世代内公平性の問題に焦点を当てる．