情報のある打ち切リを伴う生存時間データに対するNet Benefitの推定

摘要

Net Benefitは，試験群と対照群からそれぞれランダムに一人ずつ対象者を選hだときのァゥトカムをX_j,Y_jとすると,定数m≥0に対して，Pr (X_j＞Y_j+m)-Pr(Y_j＞X_j+m)と定義される。生存時間データへの適用も可能であり，比例ハザード性の仮定を必要とせず直感的にも解釈しやすいことなどから，がh領域の第Ⅲ相試験などを中心にハザード比に替わる新たな治療効果の指標として着目されている。 生存時間データに対してNet Benefitを適用する際には打ち切りへの対処が必要となるが，これまでのところ打ち切りがあるペアのスコァI(X_j＞Y_j+m)などをKaplan-Meier法に基づく条件付き確率で補完する方法が提案されている。この方法はKaplan-Meier法による生存関数の推定が妥当である状況，すなわち打ち切り時間と生存時間が独立であるという無情報打ち切りの仮定が成立する状況においては妥当な推定方法と考えられる。一方で実際の臨床試験では，例えばがh臨床試験における後治療の開始による打ち切りなど，無情報打ち切りの仮定が疑わしいような状況も考えられるが，そのような情報のある打ち切りの下におけるNet Benefitの推定法はまだ提案されていない。 本研究では，共変量に依存した打ち切りを伴うデータに対するNet Benefitの推定方法の拡張として，各対象者が打ち切られない確率の逆数で重み付けたInverse Probability of Censoring Weighting (IPCW)推定量を提案する。 発表当日は，Net Benefitの概要と提案するIPCW推定法の理論的な背景を簡単に紹介し，提案法の性能を評価したシミュレーシヨン実験の結果を報告する。