日本における演劇上演回数の時系列データ作成

摘要

演劇興行界は、今般のコロナ禍において特に多大な影響を受けた業種の一つである。演劇や音楽などのいわゆる「ライブ'ェンタメ業界」が被った損害の大きさを表す際に具体的な数値として挙げられていたのは、筆者の見た限りでは、ぴぁ総研の発表した「5月末で入場料減収1945億円、来年の1月までに見込まれる減収分を加えると6900億となり、年間市場規模約9000億円の77%が消失」というもののみだったように思う。しかし、従来から「日本における各種演劇の公演数の長期時系列データ」をまとめてきた筆者としては、「公演数（の激減)」という切り口からこの歴史的な災禍の甚大さを表したいと考えた。しかし、実際にはこれは容易なことではない。演劇各分野のうち、歌舞伎、宝塚、新派などはWeb公開データを用いて直ちに長期データを作成できるが、商業演劇·現代劇の公演データに関しては、複数の研究機関がデータベース化を試みているものの、現時点ではどれも断片的にしか整備されていないのである。