脳活動に基づく道徳の授業の評価手法の開発：道徳の授業の効果と話者に生じる調和感の関連の実験的検討

摘要

現在の道徳教育・倫理教育の効果は疑問視されており，道徳の授業の内容に関して，国内では様々な課題が指摘されている．例えば，授業を効率的に進行する上で学習者による教材への解釈が教師によって一方的に制限される点，学習者が，教師が期待する正答を察知し自身の感情を偽る点等が挙げられる．文部科学省は，道徳教育の目標を，「道徳的な心情，判断力，実践意欲と態度などの道徳性を養うこと」と定めているが，現在の道徳の授業では，授業中の教師・学習者のやりとりは表層的な内容に留まり，学習者が授業の中で特定の道徳観に関して自身の心に問いかけたり，悩hだりする機会は無いに等しいと考えられている．また，道徳の教科化に伴い，授業の効果や学習者の取り組みを定量的に評価することが求められるようになった．しかし，道徳の授業の評価方法は未だ確立されておらず，成績評価をつける教師は難しい判断を迫られている．このことから，道徳の授業の評価方法に関する知見の重要度が高まっていると考えられる．