VR/AR 向け高輝度・高解像度マイクロLED ディスプレイ開発の現状と展望

摘要

仮想現実・拡張現実（VR/AR）技術は、スマートフォンに取って代わる次世代の情報プラットフォームとして期待されている．VR/AR 端末の心臓部とも言えるのは省電力，高輝度，高解像の小型ディスプレイである．VR/AR（特にAR）用ディスプレイは，目からの距離が短い（～数cm），屋外の太陽光の下でも高い視認性の確保が必要などの特殊な環境・条件下で使用されるので，室内で遠距離から視認する従来のディスプレイに比べて，格段に高い性能が求められる．ここで，VR/AR ディスプレイに必要な解像度および輝度について少し詳しく説明する．ディスプレイの解像度は基本的に視認距離によって決まり，視認距離が短いほど高い解像度が必要になる．VR およびAR ディスプレイは，それぞれ少なくとも2,200 ppi および4,000 ppiの解像度が必要であると言われている．2,200 ppi および4,000 ppi の解像度は画素周期に換算すると，それぞれ約11 μm および6 μm になる．その中に赤・緑・青の3 色の発光素子を配置させる必要があることから，VR およびAR ディスプレイに使用可能な発光素子の最大サイズはそれぞれ5 ∼ 6 μm および2 ∼ 3 μm になる．一方，輝度に関して，VR は外光を遮断する形で使用されるので，テレビと同等の500 cd/m~2 程度の輝度があれば十分使用可能である．これに対して，AR は現実世界の画像に仮想世界の情報を重ねる技術であるため，当然ながら実世界の輝度よりも高いディスプレイ輝度が要求される．高品質AR 画像を表示させるためには，環境輝度より5 ∼ 10 倍高いディスプレイ輝度が必要であると言われている1)．屋外の環境輝度は場所によっては10,000 cd/m~2 を超えるため，AR ディスプレイは100,000 cd/cm~2 に近い最大輝度を有することが望ましい2)．これらの性能は既存の液晶，有機EL ディスプレイの性能を大きく超えるものであり，液晶・有機EL に取って代わる次世代VR/AR 用高輝度、高解像度ディスプレイの開発が強く求められている．このような背景から，近年，微小な窒化物半導体発光ダイオード（LED）を光源に用いたマイクロLED ディスプレイが大きく注目されるようになった．