小型パルス磁場発生装置の開発と磁気粒子の検出

摘要

乳癌は、癌細胞が浸潤した時に転移を有する。その際に癌細胞のリンパ液が最初に到達するリンパ節をセンチネルリンパ節という。センチネルリンパ節数個のみを摘出し、病理検査を行うことで転移の有無を確認するセンチネルリンパ節生検において、転移していないと診断されれば、その後の郭清を省略し、患者への負担を軽減することが出来る。センチネルリンパ節生検では、センチネルリンパ節の位置を特定するために、放射線同位体を用いた手法が検出率が高く主流であった[1]。しかし、放射性物質の管理や健康被害の観点から代替方法として、磁気トレーサーと磁気プローブを用いる方法が注目されている。先行研究[2]では、希土類系の強力な永久磁石を用い、磁気プローブとしてホールセンサーで深い位置の磁気ナノ粒子の信号の検知に成功したと報告されている。しかし、永久磁石は磁石表面でも数百mT程度の磁場しか発生することが出来ないため、体表面から10 mm以上の深い位置の磁気粒子を励磁し、生じる磁気信号の検出は困難であった。磁性体が発する磁気信号の第2、第3高調波による磁気マッピングも試みられている力;[3,4]、現状は小さな対象に限られ、人体をターゲットにする研究は発展途上である。そこで、本研究では、第一に既存の技術として歴史があるパルス磁場発生装置を合目的的に設計•作製し、励磁コイルから深い位置の磁気粒子を磁化させた。さらに、物性測定でよく用いられるピックアップコイルを数種類用いて磁気粒子の検出を行った。 このような方法は早期に検討されて然るべきである。小さな磁場を発生できる装置の報告はあるが、深部の磁気粒子をターゲットにした報告例はなかった。所有するパルス磁場装置は励磁コイル中心で最大45 Tを発生することができる力;、サイズが2mX2mX6m、質量がltonと大型である[5,6]。そこで、医療現場への応用を視野に入れてlm3以下の小型パルス磁場装置を開発した。