1990 年代以降の住宅政策の転換とストックホルムにおける住宅供給の変化に関する考察:スウェーデンの住宅政策に関する研究

摘要

高負担高福祉国家として位置づけられるスウェーデンは、福祉施策推進の基盤とした住宅供給施策を推進してきた。しかしながら、1980年代以降、主として欧米先進国で進行した新自由経済主義の台頭および小さな政府を指向する政治・経済体制の変動の影響、さらには高福祉施策のもとでの財政難などに対する対応策として、1990年代以降、この国の住宅政策は規制緩和・民営化の路線を歩むことになった。本研究は、福祉国家の基盤であった公共主導型住宅政策に対する1990年以降の政策転換の状況を明らかにすると同時に、国内で人口が最も集中する首都ストックホルムおよびその近郊における住宅供給の実情を把握することによって、政策転換が人々の生活に及ぼす影響を考察するものであり、本稿では、政策転換およびストックホルム市の住宅供給の変化の概況を報じる。