高崎市・前橋市における総合的な空き家対策の実態と評価: 空き家問題に対する行政対応（その2）

摘要

これらの制度は、市の空き家対策の全体方針に基づく総合的な支援メニューによって展開されている。T は、空き家による外部不経済を改善するための方策として、「空き家管理」「跡地管理」「解体」があり、「サロン改修」「住居改修」「サロン家賃」により地域力を高め、「事務所店舗改修」により賑わいを創出し、「地域限定家賃」により過疎地域の解消を進めるなど、防災、衛生、景観の低下というネガティブファクターの早期解消、並びに、地域活性化、地域コミュニティの形成による多元的な地域づくりに焦点をあてて個々の施策を相乗的・総合的に機能させている。一方、M は管理不全状態にある空き家は解体し跡地を住宅へと導き、利用可能な空き家は転入者、子育て世帯、若年夫婦世帯を手厚く支援し、住hでいる住宅に対しても市場流通するような施策で住み継ぎを促し、人を集め、更に家賃補助で地域力を高め、高額な予算を投じ、定住という目的に向けて、多様な施策を総合化している。T は地域コミュニティ重視、M は移住定住促進重視で、いずれも空き家対策の中にまちづくりを位置付けし、目的に応じた施策の組合せが実践されている。今後の空き家対策は、空き家解消そのものを目的とする空き家対策として漫然と支援策を用意するのではなく、これら2 つの事例のように明確な方針と目的に傾注した取り組みが求められる。