ボッロミーニ作品のcapriccio とcuriosità:ジョヴァンニ・バッティスタ・パッセリ『美術家列伝』の考察

摘要

17 世紀のバロック期にローマで活躍した建築家フランチェスコ・ボッロミーニ（1599－1667）の作品については、19～20 世紀にハインリッヒ・ヴェルフリンがルネサンス様式の対比概念としてバロック様式の意義を確立して以降、その現象的空間の特質として曲面を使ったファサードや内部空間の動的効果が注目されてきた。また、遡ると、18 世紀後半に始まった新古典主義の立場からは、古代の規範を逸脱した非合理な造形として批判の対象となった。これらは、ボッロミーニよりも後の時代にその作品に向けられた評価であるが、ボッロミーニが活躍した当時は、彼の作品にはどのような評価がなされていたのであろうか。本稿では、17 世紀にローマで執筆された美術家の伝記から、その一端を探ることを試みた。