住民評価を活用した色彩に関する景観形成基準の検討時と運用時の支援方法

摘要

建物の外壁の色彩に対する住民の評価の予測式を作成し、それを活用して色彩の基準を検討する機能と、基準作成後の運用時に役立つ機能を実装したツールを作成した。基準検討時には異なる観点の重視度の調整、評価値のしきい値の変更によって使用可能な色彩の範囲がどのように変化するかを確認でき、基準作成後には指定した色が許容されるかどうか、さらに評価の高い色にするにはどうすればよいかが確認できる。行政の職員にツールを使ってもらった結果、高い評価が得られ、今回ヒアリングを行った行政職員のニーズに応えることができた。なお、景観に関する条件が異なる自治体でのニーズにも対応するよう機能を追加し、ツールの汎用性を高めることは今後展開すべき課題である。また、本研究での建物の色彩の評価は、隣接した建物や周辺環境の影響、外壁の素材などを考慮しない単純化された条件での評価にとどまる。これは、複雑な条件での評価は景観形成基準での表現や運用が困難と考え、現在の景観形成基準の内容に準じた条件で評価を行うこととしたためである。ただし、評価結果の正確性と評価方法の単純さのバランスをどうとるかは重要な問題であり、支援ツールの適用は小規模な建物に限定し、大規模な建物については詳細な評価を行う前の簡易評価時のみに用いるといった実用化に向けた運用方法も検討すべき今後の課題である。