将来の宇宙探査に向けた惑星保護の取り組み

摘要

惑星保護とは，化学進化の過程や生命の起源に関して重要な天体に対して，将来の探査のために当該天体の状態を保持すること，また地球及び地球生物圏（月を含む）を潜在的に有害な地球外の生物汚染源から保護することを目的として，国際的な合意の下に設定されている惑星保護方針（ COSPARPlanetary Protection Policy）1) を遵守する活動であり，その法的根拠は「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約（宇宙条約）」の第9 条において定められている．また，我が国では平成30 年11 月より「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律（宇宙活動法）」が施行され，惑星保護に係る規程が定められたことから，わが国が係るすべての太陽系探査ミッションは，公的機関か民間企業かに関わらず，探査機の打ち上げ・運用からコンポーネントや部品の供給に至るまで，惑星保護規程を遵守していないものは違法であって，打ち上げが許可されないこととなった．このような状況に対応するため，宇宙航空研究開発機構（JAXA）では，新たに惑星保護に係る標準文書を制定し，惑星保護を実施するための組織改訂を行い，組織的に統一した対応を行うこととした．本稿では，惑星保護の概要と，JAXA における惑星保護活動の現状，及び将来計画について紹介する．