音楽の統語処理に対する主旋律の効果: 事象関連電位による検討

摘要

ERAN(early right anterior negativity)は,音楽の調性的規則(統語構造)から逸脱した音の提示後150-250msに生じる右半球優勢の脳波·事象関連電位である.近年,和音系列中で,主旋律であるソプラノが調性的規則から逸脱すると,他声部が逸脱したときよりも,ERANが高振幅になることが示された.本研究では,これが注意を向けた主旋律と知覚的に顕著な高音のどちらの逸脱による効果かを,ソプラノとバスをそれぞれ主旋律とした和音系列で検討した.その結果,ERANは主旋律の音域に関わらず,高音部が逸脱したときに大きかったことから,統語処理には髙音部が優位に影響することが示唆された.