細菌の走化性がコゥキクサへの定着に果たす役割

摘要

多くの細菌は周囲の化合物の濃度勾配に従って鞭 毛運動の方向を調節する、走化性という機能を有し ている。この走化性は、土壌中の細菌が植物の根か ら分泌される化学物質に誘引され、植物との共生関 係を成立させる際に大きな役割を果たすことが知ら れている。一方、水環境中に棲息する細菌が水生植 物と共生する際にも、走化性が関与するかどうかは 明らかとなっていない。 以前の検討において、コゥキクサより分離された共生細菌株(Aquitalea magnusonii H3)の一遺伝子破壊株ライブラリ一を作成し、各破壊株の宿主への付着 効率を評価したところ、鞭毛運動に関する遺伝子の 欠損は付着効率の低下を招いたものの、走化性に関 する遺伝子は欠損しても付着効率が変化せず、コゥ キクサへの付着に関与しないことが示唆された。一 方、H3株は走化性に必要な遺伝子群を複数セット 有していたため、一遺伝子破壊によっては走化性が 損なわれなかった、という可能性も考えられた。