大工仕事の感覚の可視化: Human Computer Interaction 技術を用いた伝統技術の保存継承

摘要

現在、日本の建築業界が抱える問題の１つに、大工人口の減少が挙げられる。その要因には師弟関係と表される伝統的な技術継承の形式にも課題が挙げられる。現在の技能伝承には現代に合わせた様々な工夫がなされているが、「見て習う」「聞いて習う」という現在の形式では、 習得までに多くの時間を要するのが現状である。大工では2 年、宮大工では8 年という目安もある1)。このような現状に対して、人の手に宿った技術を機械化する試みが多数行われている。高品質な建造物を将来も維持するために必要な試みであるが、人は優れた機構・センサー・自然知能を有していること、大工動作の繊細さ・複雑さをふまえると、人から人への継承は今後も取り組むべき重要な課題である。これは建造という意味だけなく、ある時代に存在した優れた職人の感覚を歴史として後世に伝えるという意味でも重要である。しかし、そのためには、現状の技能伝承をより高度にする必要があるのが実情である。