作家美術館の作品解説における文構成作家美術館の作品解説における設計意図の具体化(1)

摘要

美術館は、地域・社会の文化向上を目指す施設として全国各地に設立されており、中でも美術家の作品を保存・展示する作家美術館注１) は、その個人の活動や業績を市民に公開するために計画されてきた。しかし現在、現代アートはホワイトキューブと称される展示空間を求めず、展示物と展示空間の関係はより多彩で固有性を追求するものになっている。このような中で、建築家が作家作品の展示表現の工夫に努め、美術館の在り方を主張してきたかを検討することは、展示物と展示空間の関係の解明となり、次世代の美術館設計に有効な知見を与えてくれるものと考える。そこで本編は、作家美術館の作品解説注2) と図面との対応関係から、設計者が作家作品をどのように表現したか、その設計カ所と作家・作品の語句を抽出し、文構造を分析することにより、特定の作家のための美術館設計における建築家の思考の具体化を試みることで、設計方法を構築する上での新たな視座を得ることを目的とする。