四川省閬中市の観音寺の建築について中国西南地方の寺廟建築の研究（１１）

摘要

観音寺は天王殿、羅漢殿、大雄殿からなる3 棟の建築で構成される。各建物の特徴は次のように纏められる。天王殿は、単層入母屋造、本瓦葺であり、斗栱は正側背面とも三手先斗栱を用い、架構を「四架椽屋・分心三柱」の形式とする。羅漢殿と大雄殿は、いずれも桁行5 間、梁行3 間（羅漢殿4 間）、一重裳階付、入母屋造、本瓦葺と共通するが、斗栱は、下層では、前者が四面に持出梁を用い、後者が正面に三手先、両側背面に疑似尾垂木付二手先斗栱を用いる点で異なり、上層では両者とも正面に三手先斗栱、両側背面に二手先斗栱を用いているが、後者背面両隅には三手先斗栱が用いられている。架構は、いずれも抬梁式とするが、前者では「八架椽屋・分心五柱」、後者では「八架椽屋・六柱」と異なる。そのため、前者では身舎柱を母屋桁まで延ばし、裳階屋根と上層屋根を支えるのに対して、後者では、身舎柱から裳階柱に渡す上段の繋梁の上に大瓶束を立てて裳階屋根を支え、身舎柱を延ばして、上層屋根を支えている。このように、羅漢殿と大雄殿は外観において共通する点を見せるが、斗栱、架構・軸組からなる内部空間において大きな違いを見せている。