東京に現存する明治期洋館建築: 旧高島鞆之助邸の洋館の事例調査

摘要

旧高島鞆之助邸(以下、旧高島邸とする)の洋館は、明治期の軍人・政治家である高島鞆之助(1844〜1916)の私邸として麹町区紀尾井町7 (現在の千代田区紀尾井町7-1)に建設された。現在は、上智大学四谷キャンパス内に、日本イエズス会の施設「クルトゥルハイム聖堂」として洋館と、南側に隣接する庭園が現存している。旧高島邸の洋館は、今まで確かな情報がないまま、東京に現存する明治建築のひとつとして「質的に高いものをもつと同時に、比較的に保存状態が良いi」と評価されるにとどまっている。そこで、新たに文献、図面、写真についての資料調査(fig.1)と現地調査(fig.2)を実施して、建設年代や建設の経緯、ならびに建物の構造や材料などの特徴を整理した。また、旧高島邸の洋館に行われた改築の過程を明らかにし、各年代の社会状況から、旧高島邸の洋館の使用状況の変遷と建物の社会的役割について考察した。