凝灰質砂岩を対象とした岩石の熱特性，透水特性，力学特性に関するばらつきの評価

摘要

高レベル放射性廃棄物地層処分施設の操業から数百年の間の処分孔周辺（ニアフィールド）では，廃棄体の発熱，地下水の再冠水，空洞の埋め戻しに伴う応力状態の変化等が起こり，これらの環境変化に伴い，人工バリア及び周辺岩盤の物性（熱特性，水理特性，力学特性）が変化する．また，熱，水理，力学（THM）の各特性が相互に影響を与える可能性もある．例えば，水理（透水）特性や力学特性が熱の影響を受けることなどが報告されている．さらに，耐用年数が数十年の一般的な土木構造物と比較し，評価期間が非常に長いため，各特性の時間依存性も考慮する必要がある．以上より，数値解析によりニアフィールドの長期挙動を精度良く予測することは，モデル化のみならず物性評価の観点からも必ずしも容易ではない．このような複雑なニアフィールドの長期挙動を，実用的かつ合理的に評価するためには，物性のばらつきを考慮した評価体系が必要と考えられる．例えば，重要土木構造物の耐震設計においては，設計強度の平均値の-1σ（σ：標準偏差）を解析用物性値として使用し，強度を低下させることで，安全性を担保する場合がある．しかし，ニアフィールドの長期挙動評価では，強度が評価項目でなく，核種の移動速度に影響を与える要因（例えば，オーバーパックの位置や緩衝材の密度分布等）が主要な評価項目となるため，従来の土木構造物の安全評価の概念をそのままニアフィールドの安全評価に適用することは困難である．したがって，数値解析に入力する物性値について，①物性値のばらつきの把握，②物性値の相互影響，③物性値の時間依存性，を考慮しておくべきである．加えて，既往の試験方法によって取得されるTHM 特性がニアフィールド長期挙動評価においても適用性を有するかの課題の抽出が必要である．