人の移動データの作成と可視化： 感染型情報伝搬への影響

摘要

近年、人の移動データを研究目的で利用可能な機会が増えている。東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)は日本国内の様々な地域の人の流れデータとその可視化を公開している[1]。しかし、福井県のデータは存在しない。そこで本研究では、福井県の人の移動データを作成し、その可視化を行う。CSIS が公開している人の流れデータは全国のパーソントリップ（PT）調査データを基に作成されている。PT データとは、一日の人の移動に関するアンケート調査を行った結果をまとめたデータである。福井県においては2005 年11 月15 日にこの調査を行っている。調査対象者数は43,700 人である。今回、人の移動データを作成するために福井県土木部都市計画課からPT データの提供を受けた。調査対象者達の一日の移動を出発地と目的地毎に一つずつ記録したものであり、レコードの総数は110,821件である。我々はこのデータを基に、出発地と目的地の緯度・経度を生成し、その間の移動経路を道路ネットワーク上にマッピングすることで、時間分解能が1 分になるように補完した。また、新たに作成したデータをアニメーションにより可視化した。更に、このデータを用いてEpidemicRouting (ER) による感染型情報伝播シミュレーションも行った。これらの処理には一日以上の計算時間がかかるため、プログラムの並列化も行った。人の移動データを3 種類作成し、それぞれのデータを用いてシミュレーションを行い、データの作成方法が感染型情報伝播へ与える影響について調査した。