芸術家が参画した建築の設計論にみる協働根拠建築家と芸術家の協働性に関する研究（1)

摘要

近年では、建築技術の専門分化に伴う構造•環境の性能評価の制度化や、まちづくりにおける住民参カロの推奨などにより、建築家と様々な分野の専門家が設計段階から協働する事例が増加している。こうした状況において、建築家は自身の設計活動における協働の意義を明確に位置づけることが求められているといえる。そのなかでも特に芸術家との協働においては、双方が強い作家性をもつことから、建築家は自身の創作の立脚点を明確に位置づけた上で、設計論を展開するものと考えられる。たとえば谷ロ吉郎は、万來舎の設計において、彫刻家イサム•ノグチと共に談話室と庭園を計画することで、自身の日本的感覚とノグチの造形美が拮抗した濃密な空間を獲得している。本研究では、芸術家が参画した建築の設計論を検討することで、現代日本の建築家の設計論における芸術家との協働性のー端を明らかにすることを目的とする。まず本編では、建築家が思考する芸術家との協働の根拠と、芸術家の作品創作に対する建築家の関与の仕方を建築家の設計論から抽出•検討する。さらに続く次編では、建築空間と芸術作品の実体的水準での関係に関する記述から、建築作品における芸術作品の配置形式を整理し、本編の内容との関係を検討する。