日本の巡行型祭礼にみる景観から敷地スケールまでの祝祭空間の類型化: 人の活動舞台としての公共空間形成と担い手形成に資する都市祝祭空間論（１）

摘要

日本には、神社の祭神を祈願したり、豊作を祈念したりする地域独自の伝統的祭礼が無数にある。 多くの町では、この祭礼を神事としてだけでなく、地域コミュニティの発展のためや、さらには観光振興のためのイベントとして発展させてきた。そして祭りの際は、通常は交通面の機能が主である道路や広場等の都市の公共空間も、人の活動舞台として変容する。本稿では、祭りのために生み出された空間を、こうしたー時的な変容の場合も含めて都市祝祭空間と呼ぶことにする。この都市祝祭空間への変容が顕著に表れるのが、神輿や山車、踊り手が、町中の道や要所を巡行する「巡行型祭礼」である。筆者らはこの巡行型祭礼を観察することで、人の活動舞台としての公共空間の価値や使い方、整備・保全の仕方に示唆を得たいと考えた。そして、これまで個別の事例調査から、祭り舞台となる都市空間と、そこで行われる山車の動きによって成り立つ「見せ場」についての類型化1)や、祭礼の内容変遷と都市空間形成の相互影響関係2)を論じてきた。