埼玉県東部の平野部における屋敷林の特徴: 明治期の銅版画『日本博覧図』の分析をもとに

摘要

筆者は、これまで関東地方における屋敷林の構成とその変容過程を考察してきた。その際、明治期の銅版画を主史料として当該期に広く確認される8 パターン（A.屋敷背後林・B.大木と祠・C.生垣・D.面状樹木・E.鑑賞空間・F.屋敷畑・G.植栽棚・H.ソテツ）を抽出し、その関東地方における分布と組合せから、植生豊かな関東地方には、北方系・南方系の2 系統と両者が混合したものの3 つがあることを明らかにした1。これまでは主に関東地方の北方系・南方系の考察を行ってきたが2、本論では、埼玉県東部の農家が描かれた銅版画を主史料として当該地域の屋敷林の特徴を明らかにすることで、北方系・南方系の両者が混合する地域の考察を試みたい。