『近代家具装飾資料』収録の昭和戦前期百貨店家具図の特質と背景 昭和戦前期末の三越・髙島屋・白木屋の家具図の比較研究

摘要

国家総動員法が施行された戦時下に開催された三越・髙島屋・白木屋の3 社の新作実用洋家具展の家具図は、実用家具の設計製造技術の情報共有の名目の下、洪洋社発行の『近代家具装飾資料』誌上で公開された。昭和戦前期の木材工芸界（家具業界）を牽引した各百貨店の家具装飾部の家具図には、以下のような標準化された共通点が見られた。①正投影図法の第三角法による三面図（平面図・正面図・側面図）の全部又は二面で描かれていること、②寸法表記が尺寸であること、③着彩はないが、線画による木理（杢目）、椅子張り裂地の模様や張り方向などの意匠描写があること、④構造を表す断面詳細図・細部構造図などが含まれていること。