オフィスビルにおける分散型ワークスペースの設計手法に関する研究その1 利用者数の推移と利用の空間分布特性

摘要

テナントオフィスビルの共用部に設けられた屋内WSにおいて行動観察を実施した。その結果、屋内WS の平均的な席利用率が約23%であること、利用者数は昼休みに最大となり午前と比較し午後の方が多いこと、着座選択は周縁、角、中心といった空間特性に応じた傾向を示し、パーティション追加といった什器配置の変更によりその傾向が変化していることがわかった。IT の発展に伴い、必要に応じて職場の自席以外の場所に移動して気分転換を図りながら仕事することが可能となっており、そのようなワークスタイルに対応した執務空間の在り方が模索されている。筆者らは自席からより気軽に足を運べる場所としてテナントオフィスビルの共用部に着目し、大阪市内のあるテナントオフィスビルの共用部各所に実験目的で設けた分散型ワークスペース（以下分散型WS）の執務環境に関する研究1)を行なっている。分散型WS はビル内の全テナントの従業員が利用可能で部外者は利用不可、という点で半公共的な執務空間であるといえるが、そのような空間の設計根拠となるような知見は数少ない。