19世紀パリにおけるパンテオンの意味変遷について:近現代教会建築史に関する比較論的研究（５）

摘要

一般的には、共和制はなるだけカトリックを排除しようとしたが、帝政はコンコルダを尊重して国家と教会の和解をもとめ、王政はパンテオンをもっぱら教会堂としようとした傾向がある。第三共和政の初期が決定的であり、革命以降のカトリックと共和派の葛藤の歴史そのものがレビューされた。パンテオンか教会かは、21 世紀意識の遡及的な投影ではなく、まさに19 世紀末期の関係者たちの問題意識の核心であった。そこでは「祖国」概念が重視され、そのもとで宗教は、祖国の歴史にいわば内包されることで、相対化され、特権を剥奪された。教会堂であることは否定され、ライックな共和国のためのモニュメントとなる。今後の検討においては、第三共和制の初期の政策展開をより詳細に検討すべきであろう。