宇宙用伸展ブームの非線形振動特性

摘要

ロケットのフェアリング内に収納されて打ち上げられる衛星や探査機のサイズや質量には厳しい制約がある．そのため，打ち上げ後に長尺のアンテナや観測機器などを伸展したり，大型の太陽電池アレイやパラボラアンテナなどを展開したりするために様々な伸展ブーム（マスト）が開発，利用されている．特に近年，軽量な膜面構造物を展開するため，従来よりも軽量で複雑な機構を持たず，部材の弾性変形とその復元力によって収納と展開できる様々な伸展ブームが研究開発されている．その基本的な例がコンベックステープで，曲率をもった断面を平坦にして曲げ剛性を低下させて巻き取り，部材の弾性力によって展開し，断面形状が復元して曲げ剛性が向上する．それらのブームは，大変形による非線形性だけでなく，断面形状の変化による曲げ剛性の非線形を示す．本論文では，宇宙用軽量伸展ブームの例を紹介し，国内で開発された軽量伸展ブームの1つである組紐被覆Bi-Convexブームを用いて，非線形曲げ剛性と非線形振動特性の計測結果，巻き付け状態からの展開実験結果および多粒子近似法によるブームのモデル化と展開シミュレーションについてまとめる．