アクティブマスダンパを用いた鉄道車両の車体弾性振動の多モード制振（Ｈ~∞制御理論の適用）

摘要

近年の鉄道車両ではさらなる乗り心地向上のため，車体の振動低減が求められている．鉄道車両で乗り心地に影響を与える振動としては，左右方向の1Hz 前後に観測される動揺，上下方向の1Hz 前後に観測される車体の剛体振動，上下方向の10Hz 前後に観測される車体の弾性振動が挙げられる．これまでにこれらを対象とした振動低減手法は様々なものが研究・開発されている．それらの中から，近年では車体の左右動揺に対しては台車・車体間に設置するセミアクティブサスペンションやアクティブサスペンション，隣接する車体間を結ぶ車体間ダンパが実用化されており，新幹線から在来線まで多くの車両で乗り心地の向上を実現している．また，上下方向の剛体振動に対しては台車・車体間に設置する可変減衰上下動ダンパが実用化されている．可変減衰上下動ダンパは，主に車体の剛体振動を抑えるものであるが，車体の弾性振動の１つの振動モードである弾性梁としての１次曲げに対しても低減効果が得られることが示されている．