ため池群の持つ洪水軽減効果シミュレータの開発一広島県椋梨川流域への適用－

摘要

ため池は，農業用の貯水施設として近畿地方や瀬戸内地方を中心に，日本各地で古くから築造されてきた。 現代においても，ため池は農業水利や地域防災において重要な役割を果たすと共に，生物の生息生育の場や地域住民の憩いの場の提供など，地域社会において多様な役割を果たしている。 　 ため池の持つ地域防災の役割については近年，ため池が下流域に果たす洪水軽減効果が着目されている。ため池は，満水時には貯水が貯水位を高めつつ洪水吐を流下することによる貯留効果，満水位未満の場合にはさらに空き容量への貯留により，下流への洪水の流出を抑制，ないし流出を遅延させる機能がある。 ため池は流域内に少数のみ存在する場合もあるものの，多数のため池が流域内に存在する地域も多い。流域内に多数存在するため池（以下，「ため池群」とする）の総貯水量がダム貯水量に匹敵する地域もあり，ため池群の果たす洪水軽減効果への期待も高い。