第6章視覚

摘要

LED照明=省エネという風潮も一段落した感があるが，照明に対する電力消費量削減への期待は依然として高い．照明設計における快適性や高機能性は，人間の視覚特性を理解し，その知見を有効活用することで，効率的に実現することが期待される．視覚の研究は，照明設計への基礎的な知見?ならびに高付加価値化という点からも重要性は高く，今後さらに重要になってくると思われる．第6章「視覚」では，今回から「6.1視覚生理学」を竹村浩昌氏（Stanford大）に「6.4視覚情報」を福田一帆氏（東京工業大）に担当していただくことになった.従来どおり，視覚生理学，視覚心理学，色彩学，視覚情報に関して報告する．各報告に見られるように2013年も活発に視覚に関して広範に研究が行われた．視覚生理学では，視覚情報と大脳皮質の第一次視覚野（V1）の応答関係が多く見られ，特に画像統計量との関連性や，fMRIを用いた電気生理学的指標との関連を調べた研究，視覚野の fMRI応答の時間特性などが報告された．視覚心理学では，昨年に引き続きグレアに関する報告や，明るさ予測モデルを設計に適用した事例などが報告された．また，タスク?アンビエント照明環境に関する研究では，調光速度や明るさ変化に対する知覚特性などが報告された．照明空間に対する印象に関する研究や，実空間での視環境評価などについても数多く報告されている.色彩学では，CIECAMO2モデルの改良や，より予測精度を高めるパラメータが示された．2型3色覚者の色認識メカニズムに関する報告や，加齢に伴う明るさ感を扱った報告も見られた．測色や色差に関する報告，ディジタル画像を用いた白人と東洋人の好ましい肌色に関する報告など，幅広い研究がなされている．応用的色彩研究として，建造物の景観から，SNSやTwitterに関連する報告など例年にも増して多岐にわたっており，今後の産業的実用化としての結実が楽しみである．視覚情報分野では，視覚的注意に関する報告が例年どおり数多く見られ，専門誌Vision Researchにおいて特集が組まれた．奥行き知覚や眼球運動，運動視などに関する報告に加え，視覚機能の検査方法に関する特集や，質感に関するレビュー報告など，さらに研究領域が拡張していると感じられる．