札幌·モエレ山の山頂で考えたこと

摘要

旧国立大学が独立法人化されて1年半ほど経過した．その内容の是非は多々あるが，自然科学者としてこの現象を見ると，ほぼ定常活動状態となった組織体ま活性が低下するのは必然であり，外乱にせよ内乱にせよ系に撹乱を与えることは，その適応過程において系の潜在能力を引き出すための常套手段でもある．またこのような現象は，環境変化に対して適応進化を果たした個体のみが生き残れる淘汰の過程でもある。 人間社会の綾衝機能はこのような事実を顕在化しにくくはしているが，我々は本質的にそういう宇宙に生きているのである。 材料の腐食防食は，材料の機能を維持するためのメンテナンス技術である心　 インフラとしての構造物が社会に充実し，新規建築による東新速度が遅くなると，メンテナンスコストの割合が相対的に増加する。 この状態は，人間でいえば幼児～青年期の成長過程を経て中年に至った段階であり，なるべく少ない代謝エネルギーで体機能を維持している状態である。 人間個体はやがて老衰による機能不全で死ぬが，死は適応進化を選択した種として必要不可欠な現象である。 死が保証されなければ新たな生は困難であり，新生時にのみ得られる多様な可能性は発現できなくなる。 老木が生い繁った森林は代謝速度が著しく遅く，新芽が成長できる可能性は極めて小さい．森林の健全性を保つのに間伐が必要な所以である．樹木は，代謝が活発になる春に太陽エネルギー収集デバイス（葉緑体を含む菜）を製造し，収集効率の良い夏期に最大効率を発揮して，温度と日射量が下がって効率の低下する冬期に至るとアポトーシス（崩壊プログラムによる自己死）によりデバイスを破棄する。 破棄されたデバイスは生態系で分解－再利用される。 動作中のデバイスが虫による食害などで損傷を受けた場合でも特に補修は行わない（幹本体への浸食を阻止するために化学的防衛を行うことはある）。 デバイスが年周期で更新されるが故に有効なこのような戦略は，昆虫などでも採用されている。