高レベル放射性廃棄物処分容器用炭素鋼の耐食性に及ぼす微量合金元素添加の効果

摘要

地層処分環境下で炭素鋼オーバーパック表面に生成すると考えられるFe_30_4皮膜の還元反応を抑制することは，炭素鋼オーバーパックの耐食性を高める上で重要であると考えられる。 本研究では，まず，スパッタ蒸着酸化物薄膜を使って，Fe_3O_4皮膜の還元反応を抑制する合金元素を探索した。そして，次に，そのような合金元素を添加した低合金鋼を作製し，耐食性を調べた。 これに関して得られた結論は以下の通りである。 Fe_3O_4薄膜へのCr_2O_3，TiO_2，A1_3O_3およびMoO_2の添加は，その含有量の増加に従い，Fe_30_4の還元溶解を抑制する．しかし，ZnOとMn_2O_3の添加は，Fe_3O_4の還元溶解を抑制しない。 FeにCr，TiおよびAlを合金化すると，皮膜が無い状態での合金の脱気模擬ベントナイト接触水中での水素発生反応を効果的に抑制する。また，合金元素の複合添加では，0．5％または1％のCr，Mo，Si，A仁およびTiの同時添加が水素発生反応の抑制に効果的である。炭素鋼上にFe_3O_4皮膜が存在すると，脱気模擬ベントナイト接触水中における水素過電圧は大きくなるむ脱気模擬ベントナイト接触水中での低合金鋼上のFe_3O_4皮膜の還元反応の抑制には，合金中へのCr，SiおよびAlの添加が特に効果的である。また，合金元素の複合添加の場合は，0．5％Cr9Mo，Si，Al＋0．1％Tiの同時添加，そして0．5％のCr，Mo，Si，Al，Tiの同時添加が効果的である。低合金鋼表面のFe_3O_4皮膜の還元反応を抑制することにより，脱気模擬ベントナイト接触水中での低合金鋼の腐食を抑制できる。