熱力学平衡計算に基づく182合金溶接希釈部におけるマルテンサイト生成予測

摘要

原子力発電プラントの運転期間長期化に向けて高経年化対策が重要になっており，材料分野においては，溶接部近傍における応力腐食剤れ（SCC）の抑制が課題のひとつになっている．Ni基合金溶接金属である182合金と低合金鋼（LAS）の溶接部には，LAS近傍の182合金内に溶融境界に沿って幅数μm程度のType-II境界と呼ぼれる境界が生成することがあり，Type-II境界は耐食性が低く，SCCはてType-II境界に沿って進展することが知られている．Houらは，Type-II境界の近傍にはパラレルラスマルテンサイ下もしくは下部ベイナイトが生成し，硬さの土昇がみられることを報告しており，これがType-II境界における耐SCC性の低下と相関がある可能性がある．本研究では，182合金とLASの溶接希釈部におけるマルテンサイトの生成を予測することを目的として，Thermo－Calcによる182合金の熱力学平衡計算結果と，Fe－Ni 2元系合金の冷却組織の実験的検討結果を組み合わせ，フェライト（α）相の相安定性に着目した評価を行った．