細胞採取法の改善による性判別凍結受精卵の受胎率向上技術

摘要

北海道立畜産試験場では栄研化学等と共同で全く新しい遺伝子増幅法（LAMP法）による牛胚の性判別技術を開発し、キット化に成功した（Loopamp）。 Loopampはその簡易性、迅速性から多くの都府県の畜産試験場等で高い評価を得ている。今後、さらに性判別技術を普及していくためには性判別胚の凍結保存がカギとなる。 牛胚性判別のための細胞採取には、生存性や受胎性への影響が比較的小さいと考えられている部分を金属刀で切断する手法（切断法）が一般的に用いられており、切断した胚は新鮮なまま移植すれば、切断していない胚とはば同じ50～60％程度の受胎率を得ることができる。 しかし、現在最も一般的な牛胚凍結法であるエチレングリコールを主耐凍剤どするダイレクト法で切断した性判別胚を凍結すると、融解移植後の受胎率は大幅に低下する（約20％）。 一度に新鮮胚を大量に移植できる環境が少ない我が国においては、こうした性判別胚の凍結保存後の受胎率の低さが、性判別技術そのものの普及、ひいてはLoopampの普及を妨げる一因になっている。 さらに、性判別した胚を商品として市場流通させ、牛の育種改良をより一層進めるためには、移植後に高い受胎率が得られる新しい凍結方法の開発がどうしても必要である。