日米同時IT不況からみた日本の経済構造

摘要

1990年代末のIT（情報技術）ブームは，世紀の変わり目とともに一変し，2001年には電機，通信などIT関連企業が軒並み業績不振に苦しんだ。 このいわゆる「IT不況」は，それまで史上最長の景気拡大を謳歌していた米国経済だけでなく，「失われた10年」の長期停滞から立ち直りかけていた日本経済をも直撃した。米国の景気循環を認定しているNBER(National Bureau of Economic Research)は，2001年11月に，米国経済が同年3月から景気後退期に入っていると発表し，翌12月には，内閣府経済社会総合研究所が，日本経済は2000年10月に景気の山を越えたと判定した。経済活動の急変をもたらしたこの日米同時IT不況は，一体どのようなメカニズムで起きたのだろうか。 それに先立つITブームとこの不況の性格は日本と米国でどのような関連性があり，また，どのような違いがあるのだろうか。 本稿ではこの点を解明していきながら，日本経済が抱える問題について考え，不況からの回復力とIT革命の今後を展望していく。