メタンハイドレート

摘要

メタンハイドレートは包接水和物あるいはクラスレート·ハイドレートと総称される化合物の一つである。 外観は氷のようであるが，図1に示すように氷の六方晶とは異なり立方晶であるため，また，水分子で構成されたケージの中にガス分子が包接されているため，誘電率，音波速度，弾性係数，熱伝導率等の物性値が氷と大きく異なる物質である。 メタンハイドレートなどのガスハイドレートについては，石油産業界においてかねてからケーシングやパイプライン，配管類の閉塞原因物質として取り上げられてきた。 最近，新たな天然ガス資源への期待として，環境面ではノルウェー沖西方に見られる大規模海底地滑りや地球温暖化および地球の炭素循環への関わりとして，工業界では天然ガスの輸送·貯蔵プロセスなどへの応用などとして，天体物質科学の領域では土星最大の衛星タイタンの大気の謎を解く鍵物質として，ときには「バーミューダトライアングル」のようなミステリアスな事件との関わりなどとして様々な視点から話題となっている。 我が国周辺海域には，大量の天然ガスがメタンハイドレートとして海底堆積層に賦存することが明らかになっており，本資源の開発生産が実現されれば，エネルギー資源に乏しい我が国の長期的なエネルギー安定供給に資することは大である。 しかし，本資源の開発は，これまでの資源開発·生産技術の単なる延長にとどまらない困難な技術開発である。 ここでは，本資源開発の現状について言及する。