津波影響評価と環境修復に向けた生物多様性モニタリングの重要性: 干潟生態系を例に

摘要

2011年3月11日の東日本大震災による津波は，東北地方太平洋沿岸の自然生態系に大きな撹乱をもたらしたと懸念されており，たとえば，干潟によっては，以前生息が確認されていた種の7割が震災直後には観察されなくなっている。しかし，このような生物群集の変化は，まだ始まりにすぎないかも知れない。本稿では，生物群集に関するいくつかの重要な理論や概念を紹介するとともに，沿岸生態系に及ぼした津波の影響を評価するには，継続的で広域的な生物多様性モニタリングが必要であること，生物多様性モニタリングは生態系の保全や利用，天災など撹乱後に環境修復を行なうさいに指針を提供する，いわば「備え」として重要な公共的な事業であること，生物多様性モニタリングを強化していくためには市民参加型調査など新しい取組みも必要であること，を述べる。