重慶市の明代の一間裳階付仏殿について中国西南地方の寺廟建築の研究（１２）

摘要

今回取り上げた、浄果寺大雄宝殿と宝輪寺大雄宝殿の特徴は次のようになる。①規模は、浄果寺3 間×4 間（15.41ｍ×14.42ｍ）、宝輪寺3 間×3 間（17.50ｍ×13.90ｍ）と宝輪寺が一回り大きく、明間と次間の比率は、浄果寺1:1.47:1、宝輪寺1:1.42:1 と近い。②架構は抬梁式とし、梁行の断面構成は、浄果寺では10 架椽（前裳階1 架椽・前庇2 架椽・身舎4 架椽・後庇2 架椽・後裳階1 架椽）、宝輪寺では8 架椽（前裳階外1 架椽・前裳階内1 架椽、身舎4 架椽・後裳階内1 架椽・後裳階外1 架椽）である。③裳階屋根は、浄果寺では側柱に直接取り付けて吹放しとする。宝輪寺では身舎柱と側柱間の繫梁の2 分点（正背面）と3 分点の外寄り（側面）に立つ大甁束に取り付く。④登梁（斗栱内方）は、浄果寺では正背面中央間の中備中央の各1 カ所、側面の中央柱頂とその両脇の中備の各3 カ所、宝輪寺では堂隅の4 カ所と両側面の中備の各2 カ所に入れる。⑤組物は、浄果寺では下層：斗栱なし、上層：二手先斗栱、宝輪寺では下層：二手先斗栱（4 隅は疑似尾垂木付）、上層：正面は三手先の鴛鴦交斗栱、側背面は二手先斗栱（堂4 隅は疑似尾垂木付の三手先斗栱）を用いる。⑥軒は、浄果寺では一軒で偏平断面の隅扇垂木を用い、先端に鼻隠板を打つが、宝輪寺では二軒で隅扇垂木を用い、先端に鼻隠板を用いない。