水素助長疲労き裂進展に対する一酸化炭素ケミカルコーティングの効果と負荷周波数の影響

摘要

水素は鉄鋼材料中に侵入し疲労き裂進展速度を加速させる場合がある.この現象は水素機器の設計にぉいて材料選枫や許容応力等に制限を加える要因となっている.水素ガスから材料中へ水素が侵入するプロセスでは，1）疲労き裂進展によって形成された材料の新生面が水素ガスに露出，2）水素分子が新生面に吸着，3）吸着した水素分子が新生面の触作媒用によって水素原子へと解離，4）水素原子が材料内に侵入，5）き裂先端近傍に拡散·集積，というステップを経る.ここで，水素ガス中に酸素や一酸化炭素など水素よりも鉄表面との相互作用の強い特定のガス不純物分子が存在すると，優先的に鉄表面に吸着し水素分子の解離に対する鉄表面の触媒作用を被毒する.すると，材料内への水素の侵入が防がれ，結果として，水素による疲労き裂進展の加速が抑制される.本研究では，ガス不純物として一酸化炭素(CO)に注目し，水素による疲労き裂進展の加速の抑制効果を明らかにすることが目的である.ガス不純物は材料の新生面を覆い化学的作用で水素の侵入を防ぐため，ケミカルコーティングと呼ばれている.ケミカルコーティングの効果には，ガス不純物の種類，圧力，温度破等の影響因子があり，本研究では負荷周波数の影響の解明を目的とした.