ECAP加工した銅材の高応力下における表面き裂の進展挙動

摘要

材料に強変形を繰返し与え結晶粒を微細化する方法の1つにECAP(Equal Channel Angular Pressing)がある.ECAPにより組織を微細化した材料の疲労に関する研究は，S-N特性，繰返し特性，せん断帯の形成挙動に関するものが多い.ところで，ECAP材のひずみ制御の低サイクル疲労や応力制御疲労試験における高応力の繰り返しにおいて，せん断帯が主応力方向に対し45°傾いた方向に発生すること，疲労き裂はせん断帯から発生しせん断帯の方向に沿って進展を続けることが多くの研究者により示されている.これまで，せん断帯の発生機構についての報告は多い.しかし，その後のき裂発生および傾斜き裂の進展挙動を検討した研究は少なく，そのほとんどが組織的な観点から行われ，力学的な観点からの研究は極めて少ない.また，丸棒表面に発生した傾斜き裂の場合，き裂先端は混合モード下の変形状態にあり，力学的に評価することは極めて困難である.本研究は，傾斜表面き裂の進展挙動とその力学的背景を研究することを目的とする.すなわち，傾斜き裂の表面および内部方向の進展経路，またき裂面形状を調べることで表面と内部のき裂進展速度を求めた.さらに，混合モード応力拡大係数の関数である比較（有効）応力拡大係数を用いて，特定の応力下におけるき裂表面と最深部の損傷の相対的厳しさの程度の評価を試みた.