水素昇温脱離分析法を用いた低放射化鋼のクリーブ損傷評価

摘要

低放射化フェライト鋼F82Hのクリーブに伴う水素放出特性の変化を調べ，核融合炉ブランケットのクリープ余寿命評価への水素昇温脱離分析法の適用性について検討した.加えて，水素放出特性変化の要因解明の一環として，電子線照射に伴う水素放出特性の変化についても調査した.その結果，クリープに伴う水素放出特性の変化が，照射で導入されるような小さな欠陥（空孔）に起因するのではなく，300℃程度の低温では消滅しない比較的大きな欠陥（例えば，クリープキャビティ）によるものであることが裏付けられた.また，水素放出量C_HとY_Hパラメータ((t/t_r)~2σ~(-0.5)T~(-2))の間には試験条件に依らない良好な関係があり，対象部位の温度が既知であれば，水素昇温脱離分析法によってC_Hを計測することでクリープ余寿命を評価できることが示唆された.