脳動脈瘤の肥厚部位と菲薄部位を特定する血行力学パラメータに関する研究（輸送方程式の解析に基づく肥厚部位を特定するパラメータの評価）

摘要

脳動脈瘤の特徴的な壁面性状として菲薄部位と肥厚部位がある．一般に菲薄部位では破裂の可能性が高く，肥厚部位ではアテローム性動脈硬化が起きていると考えられている．しかし，これらの壁面性状は開頭手術を行うまで観察できない．開頭手術は患者への負担が大きいため，数値流体解析（CFD）により脳動脈瘤内の血流を再現し，開頭手術をせずに壁面性状を予測することができれば診断や治療に有益な情報となる．脳動脈瘤の発生，成長，破裂の機序は血行力学と深い関連がある．先行研究(1)において菲薄部位では時間平均壁せん断応力（TAWSS）が大きく，肥厚部位ではTAWSSが小さく，血流停滞の評価指標であるrelative residence time（RRT）が大きい傾向があることが示された．しかし，必ずしもこれらの関係の逆は成立せず，現在提案されているパラメータでは脳動脈瘤の壁面性状の特定はできない．